2007-01-01から1年間の記事一覧

第4章 続き

雨雲はようやく晴れはじめ、月の光が地上にさしこんだ。 「クスコさん!クスコさん!大丈夫ですか?!」 マーカインに肩をつかまれ、クスコははっと我にかえった。ずぶ濡れの髪から しずくがきらりと光ってこぼれ落ちた。 「あ、ああ…。」 「よかった、私も…

(第4章 続き)

背中の激痛にひるんだブルーは、耳障りな悲鳴をあげのけぞった。 瞬間クスコはブルーの下腹部に蹴りをいれ、地面に蹴倒した。そして 心臓めがけて槍を突き立てた。雨にぬれた地面にブルーの血が広がった。 「この野郎!」ざくざくと何度もブルーの腹を槍で刺…

(第4章 続き)

しのつく雨を透かして見た先には、2匹の忌まわしい獣が見えた。 山羊のような頭をもたげ、毛むくじゃらな体をしたそれは 死んだ魚のようなまなこを半分飛び出させている。 もう一匹はなんだか分からない頭がひとつ半ついている。よく見ると かたつむりのよ…

(第4章 続き)

天にこもった熱気が、逆巻く大風に耐え切れずひとつぶのしずくをこぼした。 そのしずくがみずからの分身を生み、やがて空の青から舞い落ちるとき、 地上にうごめくものたちは物影をもとめ、しばしの間身を縮める。 ここ、街道わきに生い立つ柏の木々の枝かげ…

第4章

宿屋の朝はあわただしい。 いそいで宿賃を払って旅立つもの、朝食のスープの味に文句をつけるもの、 井戸ばたは顔をこするだけの者から全身水浴びする者で混み合っている。 そんな中、男たちの視線に晒されながらクスコは髪を洗っていた。無遠慮な 視線には…