*プロローグ
 
 戦さ世の不穏な空気うずまく地上に、奇妙な者どもが蠢いている。

 それぞれが胸に思惑と打算を抱いて、時には謂集しまた散りぢりと

 なって死に急ぐ様は、まるで泥土の上を這い回る蟻のようであろう。

 自らも預かり知らぬ運命の糸が、乱れからまり、たぐり寄せられて
 ゆくのを彼らは知りえない。さながら神が玩ぶ盤上の骸子にも似て、

 どのような場に投げ出され、いかような目がでるかは、神々ですら

 知ること能わずゆえに。もつれほぐれた運命の糸は、
 どのような物語に織り上げられてゆくのだろうか。

 せめて無慈悲な色彩がその綾織をいろどることのないように、

 われらは祈る。ともし火を燃やし、香料を捧げよ。
 小さき者に恵みをたれたまえ、
      大いなる世界の女神、アラクニー・ソラーラよ。